黄徳昌氏のパースペクティブ

台北竹里館の館主・黄徳昌氏が来日している。彼は台北でもトップクラスの茶の目利きで、焙煎も自ら手掛け、最近では、普シ耳茶についても熱心に研究している。
黄氏とは、AAJ台湾ガイドの阿多さんを通じて数年前に知り合い、年齢も同じということで懇意にしてもらっている。
今回の来日にあわせて、茶の知識レベルがだいたい同じぐらいの人を数名集めれば品茶會をしてくれるということなので、ちょっと背伸びして僕より知識の豊富なY氏、N女史、K女史などを召集し、麻布十番の竹里館で黄さんを囲んで、品茶會をしていただいた。
まず、今年の春茶の太和烏龍と樟樹湖烏龍の飲み比べをした。生産地の違いということもあるが(産地は比較的近くて、瑞里を挟んで上と下という位置。太和の方は阿里山高山茶に区分されることが多い。)、大きな違いは、発酵度の違い。
太和の方は15~20%の発酵。一方で樟樹湖の方はやや焙煎が高い20%超。火入れは黄さん自ら数日前におこなったもので、まだ落ち着いていないとのこと。大体1分火半程度の火入れ。
面白いことに、発酵が違うだけでまるで違うお茶に仕上がっている。こういう比較は目から鱗だ。焙煎をかけるお茶としては、一定の発酵が進んでいたほうがよいのかなという印象を受けた。
その後、太和烏龍の焙煎の違うもの(毛茶、2分火、3分火)を3種類比較する。先ほどの発酵が20%超の樟樹湖烏龍と発酵が20%以下の2分火の太和烏龍がまるで同じ色をしていたのは驚いた。発酵と焙煎の関係って、こういう感じなんだな。
それから、毛茶を飲んだ時に、清香のおいしいお茶だとおもったのだが、2分火を飲んだ後に再度毛茶をのんだら、生臭さと青さがたって、美味しく感じなかった。焙煎を程よく聞かせたお茶のおいしさというものが実感できたのは収穫だった。

ほかにも、水色が透明な物がよいとか、葉脈が白く綺麗なものが良いとか、まだらな発酵をした茶葉が混ざっていたり、茶の大きさが様々で揃っていないものがあると味のバランスが崩れるとか、いろいろと勉強になることが沢山あって、面白かった。
「お茶は台湾のお茶に限らず、紅茶もプーアール茶もみな良し悪しの判断には共通点がある。」という黄さんの鑑定眼は、確かなものがある。
例えば、最後に僕達が持ちこんだ様々なお茶(なんとダージリンの釜炒り茶から日本茶まで)の良し悪しを、実際に彼が鑑定して見せてくれたのだが、彼の目でみて評価すると、たしかにうなずけることが沢山あった。
「烏龍茶の標準」が彼の中にはあって、その標準以上のものを良いとしているのだが、僕から見ると、その標準のレベルはかなり高くて、「標準のお茶以上のものをみんなに広く飲んでもらいたい」という彼の意見に賛同する一方で、日本では、そのための道のりは高くて険しいなと痛感した。
「消費者が茶荘にそのような標準を求めれば、茶荘も農家にそのような標準をもとめることになり、良い循環が生まれるんだ。」と熱く語る彼の姿勢は、本当にそのとおりだと思う一方で、日本では、そもそもその標準をもった茶荘って、ものすごく少ないよなとおもう。ましてや、その標準を見極めることのできる消費者が僕を含めてどれだけいるんだろう。
「発酵がきちんとしてあり、焙煎もしっかりしている凍頂烏龍が、いまほとんどなくなってしまったのは、茶生産者の若年化とともに、環境変化に農家がついていっていないせいもある。」たしかにその通りなのだろう。そのような根底の茶作りから見直していかなくてはならないとすると、日本の消費者の嗜好では、彼の求める理想にはなかなか近付けないだろうなとも思った。
ともかく、「美味しくて良いお茶ってなんだろう」という問いかけを常に持ちつづけることの大切さを、彼から学んだ気がする。
黄さんの茶へのパースペクティブについてはこちらを参照のこと。
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