
去年の凍頂烏龍茶騒ぎは、まだまだ記憶に新しい。またぞろ、花粉症の季節になって、この話題が復活しつつある。お茶のことを良く知らない人は、「花粉症に効くメチル化カテキンは凍頂烏龍茶しかはいっていないんだって。」と騒ぐ。一体全体、どこでどうまちがって、「凍頂烏龍だけ!」となってしまったのだろう。
そもそも、最初にあったのは、「抗アレルギー作用を発揮するといわれるメチル化カテキンが、べにふうきと呼ばれる日本茶に多く含まれている。」ということが公表されたということだった。べにふうきは紅茶用品種だから緑茶には馴染みがなく、その生産量は日本の作付け面積からいっても、微細にしかすぎない。本当は「おくひかり」などの品種はすでに一定の量産が果たされているのだが、これに目を向ける人はあまりいない。
これらのお茶の次ぎに、「青心大有」と「大葉烏龍」に一定量のメチル化カテキンが含有されていることを知ったマスコミが、なぜか、「花粉症に凍頂烏龍が効果を持つ」と番組で取り上げた。
ところが、問題は、この番組のなかで女性アナウンサーが発言したといわれる「効くのは凍頂烏龍茶だけですからね!」ということば。これがそもそもの問題の発端だったわけだ。
台湾の烏龍茶が効くといってくれれば、まだ「ふーんそうか」で終わったのだが、「凍頂烏龍」と銘柄を指定してしまったところに、多くの問題点が秘められているのだ。
疑問はつきない。
一体如何して凍頂烏龍茶が引っ張り出されたのか。これは、おそらく研究者の一人の発言として「市販されている凍頂烏龍を分析の材料の一つとした」と伝えられたからだろう。しかし、どの研究でもそこには、「凍頂烏龍」ではなく、青心大有か大葉烏龍の名前が掲げられているだけなのだ。凍頂烏龍はこれらの品種で作られているのだろうか?恐らく作られていたとしてもその量は非常に少ないのではないだろうか。あくまでも凍頂烏龍のメイン品種は、青心烏龍であるはずである。
さらに、「では、青心烏龍種にメチル化カテキンは含まれているのか?」という疑問が沸き起こる。これには明快な回答がまだ示されていない。青心大有と青心烏龍は、似て非なるお茶だ。
では、「凍頂烏龍だけ!というからには、青心大有や大葉烏龍という品種で作られる包種茶や緑茶にはメチル化カテキンは含まれないのか?」という疑問はどうか。いやいや、絶対にそんなことはない。少なくともカテキンが酸化発酵でその成分を変質させるのであるならば、凍頂烏龍茶よりも発酵度が低いはずの包種や緑茶の方がより効果は大きいはずである。
それにそもそも番組が意図した「凍頂烏龍」の定義はなんだったのだろうか?通常は南投縣鹿谷周辺の農園で作られるお茶というのはある意味、凍頂烏龍を定義するには良いものだと思うが、昔からこの定義は非常に曖昧だ。凍頂烏龍は、むしろ、定義の難しいブランドのようになってしまっている。南投縣全域で作られる凍頂烏龍式半球型包種をもって凍頂烏龍と呼ぶ場合すらある。この場合は、品種は特定されない。つまり金萓や翠玉などの品種もそこには混ざるということだ。
こんな状況の中で、なぜ「凍頂烏龍だけ」ということになってしまったのか、未だに僕は理解できない。
もし凍頂烏龍茶のメイン品種である青心烏龍種にメチル化カテキンが含有されているのなら、騒がれるべきは、よりメチル化カテキンが含まれているだろう「文山包種茶」であるはずなのだが。
それだけ日本人は、マスコミに汚されているのだろうか。
花粉症対策だけでお茶が語られるのを僕は好まない。もしそうであるのなら、凍頂烏龍よりも遥かにメチル化カテキンがふくまれているべにふうき、べにふじ、べにほまれ、おくみどりに注目したほうがよほどましではないか。
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